その空き家、
持ち続けて大丈夫?
維持費と放置リスクから考える、
これからの選択
「いつか使うかもしれない」「思い出が詰まっていて手放せない」
空き家を残しておきたい理由は、ご家族によってさまざまです。しかし、誰も住んでいなくても、税金や管理の負担は続きます。管理が行き届かなくなれば、建物の劣化やご近所とのトラブルに加え、行政による指導・勧告などの対象になる場合もあります。
本記事では空き家の現状と将来予測、年間維持費、放置した場合の問題を整理します。
SECTION 01空き家の現状と将来予測
全国の空き家は過去最多の900万2千戸
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の確報では、2023年10月1日現在、全国の空き家は900万2千戸。2018年から51万3千戸増え、空き家率も13.8%と過去最高となりました。およそ7戸に1戸が空き家という状況です。[1]
この数字には賃貸募集中の空室、売却中の住宅、別荘なども含まれます。すべてが放置された住宅という意味ではありません。
このうち「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万6千戸。2018年の348万7千戸から36万9千戸増えています。ただし、この区分も「今後住む見込みがない家」「管理されていない家」と同じ意味ではありません。[1]
相続や施設への入所をきっかけに、住む人がいなくなる
実家の相続や、一人暮らしの親の施設入所などが、空き家になるきっかけとなることがあります。引き継いだ家に家族が住む予定がなければ、管理や活用の方針を考える必要があります。[8]
2043年には「約4戸に1戸」が空き家になる試算も
野村総合研究所の2025年6月公表資料では、住宅の除却水準が直近のまま続く場合、2043年の空き家率は25.6%になると試算されています。[2]
NRIは2024年の公表資料で、一戸建ての空き家では腐朽・破損のある割合が比較的高い傾向も指摘しています。将来予測は前提条件によって変わり、全国の傾向が個々の地域や物件にそのまま当てはまるわけではありません。[9]
SECTION 02空き家の年間維持費はいくら?
空き家は、住んでいなくても維持費がかかります。その金額は立地、敷地の広さ、建物の状態、自分で管理するか業者に頼むかによって大きく異なります。
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」では、年間の維持管理費の回答区分で最も多かったのは「10〜20万円未満」の16.7%でした。一方、「費用はかかっていない」を含め、5万円未満の区分を合計すると約半数です。[3]
所有を続けるか判断するときは、調査上の維持管理費をそのまま総保有費用と考えず、次の支出を自分の物件に当てはめて確認しましょう。
| 費用項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 納税通知書で確認。都市計画税は課税対象となる場合 |
| 火災保険など | 空き家の使用状況に合った契約内容・保険料 |
| 電気・水道 | 管理のために契約を継続する場合の料金 |
| 草刈り・庭木の剪定・清掃 | 自分で行う範囲と外注する範囲 |
| 見回り・管理委託 | 点検内容、訪問頻度、追加料金 |
| 現地への交通費 | 往復交通費や宿泊費 |
| 修繕費 | 雨漏り、外壁、屋根、設備などへの対応 |
年間の負担を把握することが重要
仮に税金12万円、保険料3万円、電気・水道2万4千円、草刈り・剪定6万円、交通費6万円という条件を置くと、年間支出は29万4千円です。同じ支出が続けば、5年間で147万円、10年間で294万円になります。
上記は、列挙した費用だけを計算した例です。雨漏りなどの修繕が必要になれば別途費用がかかります。実際の年間負担は、納税通知書、保険契約、管理や修繕の見積書を使って確認しましょう。
SECTION 03空き家を放置すると起こる問題
① 周辺環境への悪影響と近隣トラブル
建物の破損や庭木の繁茂、ごみの放置などを見過ごすと、敷地内の問題が周辺の生活環境に影響するおそれがあります。[4]
- 屋根材・外壁材の落下、倒壊のおそれ
- 庭木の枝が隣地や道路にはみ出す
- ごみや動物の糞尿などによる悪臭
- ねずみ・害虫などの発生
② 不法侵入や放火などへの備え
窓や扉が壊れたままの建物は、不法侵入につながるおそれがあります。適切に管理されない空き家では、放火など防犯面の問題も懸念されます。施錠や窓の状態を確認し、敷地内にごみや不要物をためないことも大切です。[4][10]
③ 第三者に被害を与えた場合の賠償責任
建物や塀などの設置・保存に瑕疵があり、落下や倒壊によって隣家や通行人に損害を与えた場合、民法第717条などに基づき、所有者・占有者が損害賠償責任を問われることがあります。[7]
責任の有無や範囲は、建物の状態、管理状況、事故の原因などによって異なります。被害が起きる前に建物の状態を確認し、必要な補修を行うことが大切です。
所有者が遠方に住んでいる場合も、定期的な確認や、異常があったときに対応できる体制を考えておきましょう。
SECTION 04法改正と、行政措置・税負担
2023年12月13日施行の改正空家法では、従来の「特定空家等」に加え、適切に管理されず、放置すると特定空家等になるおそれのある「管理不全空家等」も指導・勧告の対象となりました。[5]
勧告を受けると、土地の税負担が増える場合も
管理不全空家等や特定空家等について勧告を受けると、その敷地は固定資産税などの住宅用地特例の対象から除外されます。空き家になっただけで、自動的に特例が外れるわけではありません。[5][6]
| 固定資産税の住宅用地特例 | 課税標準の扱い |
|---|---|
| 小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡まで) | 価格の1/6 |
| 一般住宅用地(上記を超える対象部分) | 価格の1/3 |
特例が外れた場合の実際の税額は、土地の条件や負担調整措置などで異なります。所在地の税務担当窓口で確認しましょう。[5]
特定空家等では、命令や行政代執行に進むことも
特定空家等について法定の要件を満たす場合には、命令や行政代執行による解体等が行われ、その費用が所有者等の負担となる場合があります。災害などで緊急に対応する必要がある場合の緊急代執行制度も設けられています。[5][11]
制度はすでに運用されています
国土交通省の2025年3月31日時点の調査では、管理不全空家等への勧告は378件、特定空家等への勧告は4,153件です。前者は改正法施行後、後者は2015年の法施行後の累計で、集計期間が異なります。[11]
SECTION 05家族に負担を引き継ぐ前に
【考察・推測】所有者自身が今は管理できても、将来も同じように通えるとは限りません。使い道を決めないまま次の相続を迎えると、管理費の負担や売却方針について家族間で調整が必要になる可能性があります。
「誰が管理するのか」「費用は誰が負担するのか」「いつまで残すのか」を、早い段階で話し合っておきましょう。
- 今後、誰かが住む具体的な予定はありますか?
- 年間の支出を把握できていますか?
- 定期的に点検・管理できる人はいますか?
- 修繕が必要になったときの予算はありますか?
- 家族で管理担当者と今後の方針を共有していますか?
SECTION 06「残す・貸す・売る」を考える
空き家を所有すること自体が問題なのではありません。具体的な利用予定があり、管理体制と予算を確保できていれば、残しておく選択にも意味があります。
一方、「使う予定がない」「管理のために通うことが難しい」「修繕費を負担できない」という場合は、現在の状態で売却できるか、賃貸として活用できるかを確認しておくことが、判断材料になります。
| 選択肢 | 主に確認したいこと |
|---|---|
| 所有を続ける | 利用時期、年間予算、管理担当者、緊急時の対応 |
| 貸して活用する | 賃貸需要、改修費、賃料、貸主としての管理負担 |
| 売却する | 現状の査定価格、売却期間、費用を差し引いた手取り額 |
| 解体して土地を活用する | 解体費、解体後の税負担、土地の需要、建築上の条件 |
解体する場合も、先に費用や土地の条件を確認しましょう。建物を残したまま売却する方法と比較してから判断することが大切です。
SECTION 07大切な家の、これからを相談
思い出のある家をどうするかは、簡単には決められないものです。それでも、まず維持費や建物の状態、地域の需要を知ることで、ご家族に合った選択を考えやすくなります。
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SOURCES出典・確認資料
確認日:2026年10月18日。統計の調査時点と公表時点は異なります。将来予測は記載時点の条件付き試算であり、最新予測とは限りません。制度は今後変更される場合があります。
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 確報」
2024年9月25日公表/2023年10月1日現在 - 野村総合研究所「2040年の住宅市場と課題」
2025年6月12日公表/資料31ページ - 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」
2025年8月29日公表/図表4-74 - 国土交通省「空き家を放置するリスク」
公表日表記なし - 国土交通省「空家法とは」
公表日表記なし - 東京都主税局「特定空家等・管理不全空家等と住宅用地特例」
公表日表記なし - 東京都住宅政策本部「空き家を放っておくとどうなる?」
公表日表記なし - 政府広報オンライン「空き家にしないために。考えておこう!住まいの終活」
公開ページ参照 - 野村総合研究所「2043年の空き家率は約25%まで上昇する見通し」
2024年6月13日公表 - 宍粟市「空き家等の適正な管理を」
公開ページ参照 - 国土交通省「令和5年改正空家法に基づく取組が広がる」
2025年12月25日公表/2025年3月31日時点
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