「隠れ空き家」とその対処法は?


実家と住まいのこれから

その実家、
「隠れ空き家」になっていませんか?

留守宅・年に一度だけ使う家・長屋に潜むリスクと対処法

  • 「親が施設に入ったけれど、実家はそのままにしている」
  • 「年に一度は帰っているので、空き家ではないと思っている」
  • 「長屋の隣には人が住んでいるから、管理はそれほど心配していない」

こうした住宅でも、日常的に人が暮らしていなければ、建物の傷みや管理上の問題が進んでいるかもしれません。

大切なのは、空き家と呼ばれるかどうかよりも、実際に使われ、適切に管理されているかどうかです。

この記事では、見過ごされやすい「隠れ空き家」の具体例と、持ち続けるリスク、早めに考えておきたい対処法をご紹介します。

隠れ空き家とは?

「隠れ空き家」は、法律で定義された正式な用語ではありません。本記事では、日常的に人が暮らしていないものの、所有者が空き家と認識していなかったり、建物の一部に居住者がいるため空家法の対象にならなかったりする住宅・住戸を指して使います。

例えば、入院や施設入所で長期間留守になっている実家、年に一度だけ利用する家、一部の住戸だけに人が住んでいる長屋などです。

なお、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家法」といいます。)では、居住その他の使用がなされていない状態が常態となっている建築物と、その敷地などを「空家等」としています。

隠れ空き家の具体例

CASE 01

入院・施設入所

戻る予定が決まらないまま、実家が長期間留守になっている。

CASE 02

年に一度の利用

帰省や墓参りの際だけ使い、普段は人の目が届きにくい。

CASE 03

一軒だけ居住の長屋

一部の住戸に人が住み、ほかの住戸は使われていない。

1.入院や施設入所による「留守宅」

一人暮らしの親が入院したり、高齢者施設に入所したりして、実家に誰も住まなくなるケースです。

「退院したら戻るかもしれない」「本人が家を残したいと言っている」といった理由から、家具や生活用品を置いたまま保有を続けることもあるでしょう。

ただし、戻る予定が決まらないまま留守の期間が長引くと、管理の負担も続きます。家を残す場合は、本人の希望を確認しながら、誰が管理し、費用をどのように負担するのかを決めておくことが大切です。

2.「年に一度程度の利用」がある家

お盆や年末年始だけ帰省する実家や、墓参りの際に立ち寄る家も、普段は人の目が届きにくい住宅です。

「年に一度行っているから大丈夫」とは限りません。短時間の訪問だけでは、屋根や床下の不具合、雨漏り、害虫の発生などを見落とす可能性があります。

また、訪問していることと、住宅として継続的に利用していることは同じではありません。国の基本指針では、「常態」にあたるかどうかの目安として、概ね年間を通じて使用実績がないことが挙げられています。ただし、実際の判断は使用状況を踏まえて自治体が行うため、年に一度の帰省があるから対象外、と決めつけることはできません。

3.「一軒だけ居住」の長屋

複数の住戸が壁などを共有してつながっている長屋で、一軒だけに人が住み、ほかの住戸は長期間使われていないケースです。

長屋や共同住宅は、一部の住戸が使われている場合、原則として建物全体が空家法上の「空家等」の対象にはなりません。ただし、自治体の条例によって、空いている住戸への指導・助言などが行われる場合があります。

法律の対象にならなくても、使われていない部分の劣化が止まるわけではありません。居住中の住戸があるからこそ、建物全体を見据えた管理が必要です。

なぜ今、隠れ空き家への備えが必要なのか

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月1日時点の全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高となりました。

全国の空き家数900万2千戸
総住宅数に占める空き家率13.8%

この数字には、賃貸用や売却用、別荘なども含まれます。このうち「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万6千戸です。なお、これらは統計上の分類による数値であり、本記事で扱う「隠れ空き家」の数を示すものではありません。

団塊の世代が高齢期を迎えるなかで、入院や施設入所、相続に備え、留守宅の管理や実家の引き継ぎ方を早めに考えておくことが大切です。売却のしやすさなどは、地域や物件の条件によって異なります。

「いつか考える」と先送りせず、家族が話し合えるうちに方針を整理しておきましょう。

隠れ空き家を持ち続けるリスク

建物の劣化や不具合に気づきにくい

人が暮らしていない家では、換気や日常的な点検の機会が減ります。雨漏りや湿気、カビなどへの対応が遅れると、傷みが広がり、修繕の負担が大きくなるおそれがあります。

近隣とのトラブルにつながる

庭木や雑草の繁茂、害虫の発生、不審者の侵入などは、近隣の生活にも影響します。外壁や屋根材などに傷みがある場合は、安全面の確認も欠かせません。

使わなくても維持費がかかる

居住していなくても、固定資産税や保険料、庭木の手入れ、点検・修繕などの費用がかかります。遠方にある実家では、管理のための交通費や時間も負担になります。

「管理不全空家等」として勧告を受けると、税負担が増える可能性も

2023年12月13日施行の改正空家法により、適切に管理されず、そのまま放置すれば「特定空家等」になるおそれのある空き家は、「管理不全空家等」として市区町村による指導の対象となりました。

指導後も改善されず、必要な措置を取るよう勧告を受けると、その敷地は固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外され、土地の税負担が増える場合があります。

売却や賃貸の選択肢が狭まる

建物の状態が悪くなると、売却前の修繕や片付けが必要になったり、そのまま貸すことが難しくなったりします。国土交通省も、放置による劣化や資産価値の低下、近隣への悪影響を注意点として挙げています。

隠れ空き家にはどう対処すればよい?

1.今後使う予定を、家族で具体的に話し合う

まずは、所有者本人の希望を尊重しながら、次の点を整理しましょう。

  • 本人が戻って暮らす予定はあるか
  • 家族の誰かが住む、または利用する予定はあるか
  • 維持費をどこまで負担できるか
  • 管理を担当できる人はいるか
  • いつまでに今後の方針を見直すか

「いつか使うかもしれない」という場合も、見直しの時期を決めておくと、判断の先送りを防ぎやすくなります。

2.保有するなら、管理の仕組みをつくる

家を残す場合は、定期的な訪問や換気、雨漏り・外壁・庭木などの点検を続けましょう。

家族が遠方に住んでいる場合は、管理サービスの利用も選択肢になります。点検した日や建物の状況を写真で残し、不具合があった際の連絡先も共有しておくと安心です。

3.使う見込みが薄い場合は、売却・賃貸を比較する

将来の利用予定がはっきりしない場合は、持ち続ける費用と、売却・賃貸の条件を比較してみましょう。

売却価格だけでなく、修繕費、家財の処分費、賃貸後の管理負担なども含めて考えることが大切です。相談したからといって、すぐに売却を決める必要はありません。

4.長屋は、解体や売却の前に建物と権利関係を確認する

長屋では、隣の住戸と壁や屋根などがつながっているため、一戸建てと同じ感覚で解体や大規模な改修を進めることはできません。

まずは、土地・建物の登記、共有部分の有無、隣接住戸との構造上のつながりを確認しましょう。自分の住戸だけの解体や売却が可能か、どのような調整が必要かは、物件ごとの確認が必要です。

不動産会社や建築士などに相談し、必要に応じて法律の専門家も交えて、管理・修繕・売却の方法を検討しましょう。

「空き家ではないから大丈夫」と考える前に

大切な実家を残しておきたい気持ちは、ご家族によってさまざまです。

一方で、日常的に使われていない住宅には、管理の手間も費用もかかります。法律上の空き家に当たるかどうかだけでなく、今の管理を続けられるか、将来誰が引き継ぐかまで考えておくことが大切です。

実家の今後、まずはご相談ください。

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