制度情報の確認日:2026年11月6日。制度の内容や金額は変更されることがあるため、手続きの前には必ず最新情報をご確認ください。
使っていない実家に、お金と手間をかけ続けていませんか?
次のような状況に、心当たりはないでしょうか。
- 親が施設に入り、実家が空いたままになっている
- 遠方の実家へ、草刈りや見回りのために通っている
- 税金や管理費は払っているが、今後使う予定がない
- 相続する可能性はあるものの、家族でまだ話し合っていない
住む人も使う予定もないのに、お金と手間だけがかかり続ける。そんな不動産は「負動産(ふどうさん)」と呼ばれます。ここでは、利用する価値や得られる収入に対して、所有する費用や手間の負担が大きくなった不動産を指す言葉として使います。法律上の分類ではありません。
この記事では、負動産になる理由、持ち続けた場合の負担、そして手放す・活かすための方法を整理します。「うちは大丈夫」と思っている方にも、現状を確認するきっかけにしていただければ幸いです。
この記事の内容
あなたの状況に合わせた読み方ガイド
| あなたの状況 | 特に読んでほしい章 |
|---|---|
| これから実家を相続するかもしれない | 第3章(現状整理)、第5章(相続前の準備) |
| すでに所有していて、維持管理に困っている | 第3章(費用の整理)、第4章(対処法) |
| 最近相続が始まり、相続放棄も考えている | 第5章(期限と注意点)を先に確認 |
相続放棄を検討している方へ:期限を先に確認
原則として、自分のために相続の開始があったこと(亡くなったことと、自分が相続人になったこと)を知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。放棄を少しでも考えている方は、先に第5章をご覧ください。
第1章 「負動産」とは?資産だった実家が負担に変わる理由
1-1.不動産の価値は、売却価格だけでは決まらない
不動産の価値は、売れる価格だけでなく、使える価値(自分や家族が住む・使う)、得られる収入(貸して家賃が入る)、かかる費用(税金・維持費・修繕費)、手放しやすさ(買い手や引き取り手が見つかるか)を合わせて考える必要があります。
このうち、使う予定がなく、収入もなく、費用だけが残り、手放しにくい。そうなったとき、不動産は「負動産」に近づいていきます。
利用価値・収入と、費用・手間のバランスを確認
1-2.地域の需要や暮らし方が変わり、使い手が見つかりにくくなる
人口減少や世帯数の変化に加え、駅やバス停までの距離、買い物のしやすさ、近くの医療機関など、暮らしの利便性も買い手や借り手の判断材料になります。建物の間取りや設備が、今の暮らし方に合わなくなっているケースもあります。
ただし、「地方の不動産は売れない」と一律に言えるわけではありません。同じ地域でも、物件の状態や立地条件によって需要は大きく変わります。
1-3.建物・土地・権利関係が、利用や売却の障害になる
負担が重くなりやすい物件には、次のような特徴があります。
- 傷みが進み、修繕費が大きくなる建物
- 建て替えや道路との接し方に制約がある土地
- 境界があいまい、名義が古いまま、共有者が多いなど、権利関係の整理が必要な不動産
- 利用していないのに、管理費・修繕積立金の負担が大きいマンション
なお、リゾートマンションや山林・原野は、負動産の代表例として語られることがありますが、本記事では「実家とその敷地」を中心に扱います。
1-4.「いつか使うかも」のまま、方針が決まらない
親が大切にしてきた家、子どものころの思い出が詰まった家を、簡単に手放す決断はできないものです。決められないのは、決して怠けているからではありません。
大切なのは、決められないまま、費用と時間だけが過ぎていく状態を避けることです。そのためには、まず現状を知ることから始めましょう。
第2章 持ち続けることで生じる、4つの負担とリスク
2-1.お金の負担:税金・管理・修繕の支出が続く
使っていない不動産でも、次のような費用は継続的にかかります。
- 固定資産税(地域によっては都市計画税も)
- マンションの場合は管理費・修繕積立金
- 火災保険などの保険料
- 草刈り・庭木の剪定・清掃の費用
- 現地への交通費、見回りにかかる時間
一つひとつは大きくなくても、年間で合計すると相当な金額になることがあります。まずは1年分を書き出してみましょう(整理の仕方は第3章で紹介します)。
2-2.管理の負担:建物の傷みや近隣への影響
人が住まない家では、換気や点検の機会が減り、雨漏りなどの不具合の発見が遅れることがあります。屋根や外壁の一部が落ちる、庭の雑草が隣地にはみ出す、害虫や小動物が住みつく。こうしたことは、近隣とのトラブルにつながることがあります。
事故やトラブルが起きた場合に、所有者の責任が問われるかどうかは、原因や管理の状況によって異なります。危険な箇所があれば、立ち入りや応急措置の方法を専門業者などに相談し、周囲への影響を防ぎましょう。
固定資産税が上がる可能性にも注意が必要です
周辺に悪影響を及ぼすおそれのある空き家は、法律上「管理不全空家等」や「特定空家等」に指定されることがあります。市区町村から勧告を受けると、その敷地は、住宅用地の特例(固定資産税が軽くなる仕組み)の対象から外れます。
2-3.手続きの負担:名義や相続関係を整理する必要がある
使っていない不動産でも、相続登記など、法律上必要な手続きがあります。期限や過料の対象になる場合もあるため、詳しくは第5章で整理します。
2-4.心と家族の負担:片付けや方針の調整が難しくなる
遺品整理は、物量だけでなく気持ちの面でも重い作業です。また、兄弟姉妹の間で「残したい人」「早く手放したい人」の意見が分かれることもあります。
決められないまま時間が過ぎると、次の相続が起きた場合、未整理の不動産や管理の課題が、次の世代に引き継がれることがあります。
第3章 対策を決める前に、実家の現状を整理しよう
対処法を選ぶ前に、まず今の状況を把握しましょう。下の表は、危険度を点数で判定するものではありません。「まだ確認できていない項目」を見つけるためのチェックリストとしてお使いください。
| 確認項目 | 整理する内容 |
|---|---|
| 所有者・名義 | 誰の名義か、共有者はいるか、相続登記は済んでいるか |
| 建物・土地の状態 | 雨漏り、残された家財、庭の状態、前の道路、境界など |
| 年間の負担 | 税金、管理費、保険料、交通費、修繕費など |
| 利用の予定 | 誰が、いつから、何のために使うのか |
| 売却・賃貸の可能性 | 想定される価格、地域の需要、必要な工事と費用 |
| 家族の希望 | 残したい人、管理する人、費用を負担する人 |
「3つの費用」を比べてみる
方針を考えるときは、「いくらで売れるか」だけでなく、次の3つを比べるのがおすすめです。
- 手放す費用:売却・引き取りにかかる費用と、手元に残る金額
- 持ち続ける費用:税金・管理費・修繕費など、毎年かかる費用の合計
- 活かす費用:貸す・使うために必要な工事費や、管理の手間
解体や大きなリフォームは、費用が大きい分、実施する前に売却や活用の可能性を調べておくと、費用をかける必要があるか判断しやすくなります。
有料引き取りなら支払総額も確認
+ 見込まれる修繕費
空室や修繕も織り込む
金額に加えて、管理する人・時間・家族の希望も比較
第4章 負動産を手放す・負担を減らす方法
ここからが本題です。5つの方法を比べてみましょう。期間は物件や手続きによって大きく異なるため、一律の目安は示していません。
| 方法 | 主な検討場面 | 費用・条件の確認ポイント |
|---|---|---|
| 仲介・買取による売却 | 使う予定がなく、買い手を探したい | 手取り額、諸費用、売却の条件 |
| 譲渡・寄付 | 隣地の所有者などが使える可能性がある | 受け入れの意思、登記費用などの負担 |
| 相続土地国庫帰属制度 | 相続で取得した土地を手放したい | 土地の要件、審査手数料、負担金 |
| 民間の有料引き取り | 費用を払ってでも手放したい | 総額、契約内容、所有権移転の手続き |
| 賃貸などの活用 | 需要があり、管理を続けられる | 初期費用、収支、利用上の制限 |
相続放棄を検討している方は、財産処分を進める前に期限と手続きを専門家へ確認してください。
解体・大きな工事・契約の前に相談
4-1.売却:「売れない」と決めつける前に可能性を調べる
負動産の悩みの出口として、まず検討したいのが売却です。価格が高くなくても、所有権の移転によって、将来の所有・管理負担を軽くできる点がメリットです。固定資産税等の精算や、売却後の契約上の責任も確認しましょう。確認したいのは次の点です。
- 今の状態のままで売却できるか
- 仲介(買い手を探す)と買取(会社が買い取る)で、価格や条件がどう違うか
- 低い価格でも、保有を続ける費用と比べてどうか
- 売却前の片付けや修繕は、どこまで必要か
相続した実家を売るときの税金の特例
相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円(一定の場合は2,000万円)を差し引ける特例があります。ご注意いただきたいのは、3,000万円が税額ではなく、利益(譲渡所得)から差し引ける金額という点です。
現行の制度は2027年12月31日までの売却が対象で、相続から売却までの期限など、ほかにも要件があります。対象家屋には「1981年5月31日以前に建築」「区分所有建物ではない」等の条件があり、相続後に貸すなどの利用で対象外になる場合もあります。耐震改修・取り壊しや相続人の人数等にも条件があるため、売却・解体・賃貸を始める前に税理士や税務署に確認しましょう。
4-2.譲渡・寄付:使いたい人や受け入れ先を探す
隣の土地の所有者など、使い道がある人に相談する方法があります。ただし、無料でも引き取り手が見つかるとは限りません。自治体への寄付も、受け入れてもらえるかどうかの確認が必要で、受け入れ条件は自治体によって異なります。また、名義変更の登記費用などの負担が生じることもあります。
4-3.相続土地国庫帰属制度:条件を満たす土地を国へ引き渡す
2023年4月に始まった、相続などで取得した土地を国に引き渡せる制度です。主なポイントは次のとおりです。
- 対象は、相続などで取得した土地
- 建物がある土地や、境界が明らかでない土地などは対象外
- 審査手数料は土地一筆あたり1万4,000円
- 承認された場合は、別途負担金が必要。土地の区分や面積などで金額が異なり、一律ではない。20万円が基本ですが、一部の市街地の宅地・農地や森林等では面積に応じた算定となる
制度が使えるかどうかは、土地の状態によって分かれます。建物がある場合に、解体を先に進めるのは費用の面でもリスクがあるため、まずは法務局に事前相談して、要件や費用を確認することをおすすめします。
法務省の統計(2026年9月30日現在・速報値)では、申請が6,125件、国への帰属が3,231件でした。ただし、申請件数には審査中の案件も含まれるため、この数字から「通る確率」を読み取ることはできません。
「更地にすれば解決」とは限りません
解体しても、土地の引き取り先が見つかるとは限りません。土地の税負担や利用できる特例への影響、国庫帰属のほかの要件も確認し、工事前に方針を比較しましょう。
4-4.民間の有料引き取り:契約と所有権移転まで確認する
費用を払って、不動産を引き取ってもらうサービスもあります。業者によって内容が大きく異なるため、次の点を必ず確認しましょう。
- 費用の総額と内訳、追加費用の有無
- 契約の相手方(誰に所有権が移るのか)
- 所有権の移転時期と登記の手続き
特に、「管理を委託する契約」と「所有権を移す契約」は別物です。管理を任せただけでは、税金などの所有者の負担はなくなりません。
4-5.活用:収入だけでなく、費用と管理の継続性を考える
賃貸住宅や駐車場への活用は、収入を得られる可能性があります。そのほか、資材置き場、貸し農園、トランクルームなども考えられますが、土地ごとに法令上の制限や需要の差があります。
始める前に、初期費用、毎月の収支、管理を続けられるか(遠方でも対応できるか)を現実的に見積もりましょう。収益が出なかった場合にどうするかも、決めておくことが大切です。
第5章 相続前・相続開始後で、確認すべきことは違う
5-1.相続前:親の希望と、不動産の情報を共有する
相続が始まってからでは、決めることが一気に増えます。今のうちに、次の点を整理しておきましょう。
- 所有している不動産と、関連する資料の場所
- 親本人の希望(残したい、手放してもよい など)
- 誰かが使う予定があるか
- 管理・片付け・費用負担の方針
「親が元気なうちに」と言われますが、状況はご家庭によって異なります。「本人の意思を確認できるうちに」話し合う、と考えると取り組みやすくなります。
共有にする場合は、その後の意思決定も確認
不動産全体の売却などには、原則として共有者全員の合意が必要です。共有にするかを決めるときは、管理方法や費用負担、将来の売却方針も話し合っておきましょう。
5-2.相続開始後:期限のある判断を先に確認する
相続放棄は、実家だけを選んで放棄する手続きではありません。預貯金など、ほかのプラスの財産も含めてすべてを引き継がないことになります。
また、相続財産を処分してしまうと、相続を承認したとみなされ、放棄できなくなる場合があります。放棄を少しでも検討している間は、実家の解体や遺品の処分などを進める前に、弁護士などの専門家に相談しましょう。
相続放棄は家庭裁判所への申述が必要です。家族間で「実家は引き継がない」と話すだけでは、法律上の相続放棄にはなりません。財産調査をしても判断に必要な資料が得られない場合には、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法もあります。
5-3.相続放棄後も、財産の保存義務が残る場合がある
相続放棄をしたあとの管理について、「放棄しても管理責任が残る」と広く言われることがありますが、正確には次のとおりです。
放棄の時点で、その財産を現に占有している場合は、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を保存する義務があります。
すべての相続放棄者に、一律の義務が残るわけではありません。ご自身の状況が当てはまるかどうかは、専門家に確認してください。
5-4.相続登記・住所等変更登記の期限を確認する
不動産の名義に関わる、次の2つの手続きは義務になっています。
| 手続き | ポイント |
|---|---|
| 相続登記 | 2024年4月1日から義務化。自己のために相続が始まり、その不動産の所有権を取得したことを知った日から原則3年以内に申請。2024年4月1日より前に取得を知った未登記の不動産は、原則2027年3月31日まで。遺産分割成立後は、その内容に応じた登記も原則3年以内に必要。正当な理由なく怠ると、過料の対象になることがある。 |
| 住所等変更登記 | 2026年4月1日から義務化。住所や氏名が変わった日から原則2年以内。施行前に変更していて未登記の場合は、2028年3月31日までが期限。 |
遺産分割がまとまらない場合などには、「相続人申告登記」で基本的な申請義務を履行できる場合があります。ただし、これだけで不動産を売却できるわけではなく、遺産分割後の登記義務も別途あります。司法書士や法務局へご相談ください。
第6章 どこに相談する?相談先と準備する資料
悩みの内容によって、相談先は異なります。
| 相談内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 売却・買取・賃貸活用 | 不動産会社 |
| 相続登記・名義の整理 | 司法書士、法務局 |
| 相続放棄・相続人間の争い | 弁護士 |
| 売却時の税金・特例 | 税理士、税務署 |
| 空き家施策・地域の相談窓口 | 物件所在地の自治体 |
| 相続土地国庫帰属制度 | 法務局 |
準備しておくと話が早い資料
- 固定資産税の納税通知書
- 登記事項証明書
- 所在地がわかる資料(住所、地図など)
- 建物や敷地の写真
- 年間の費用のメモ
ただし、すべてそろっていなくても、手元にある資料から相談できます。「何から手をつければよいかわからない」という段階でも、遠慮なく専門家に声をかけてみてください。
まとめ:まずは実家の現状と、家族の希望を確認することから
負動産の問題は、早い段階で状況を把握すると、選択肢を比較する時間を確保できます。最初の一歩は、状況によって次のようになります。
- 相続前の方:実家の今後について、家族で話す機会をつくる
- 所有している方:年間の費用と、売却・活用の可能性を確認する
- 相続が始まった方:相続放棄や登記など、期限のある手続きを先に確認する
実家の売却・活用でお悩みの方へ
不動産の価値や活かし方は、物件ごとに事情が異なります。株式会社エクシードでは、不動産の売買仲介・買取り・賃貸仲介・賃貸管理を行っています。「売れるかどうかわからない」「残すか手放すか迷っている」という段階からでも、ご相談いただけます。
参考資料・出典(2026年11月6日確認)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事情に対する法律・税務上の助言ではありません。具体的な手続きや判断は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。
空き家相談についてお気軽にご相談ください
空き家には、土地・建物だけでなく、
相続/家財整理/空き家管理/建物解体/売却
など、さまざまな問題が関係します。
「何から始めればよいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
エクシードでは、空き家の不動産について、
「売却した場合はいくらくらいになるのか」
「そのまま売るべきか、解体した方がよいのか」
「空き家のまま所有していて問題ないのか」
といったご相談にも対応しています。
まだ売却すると決めていない段階でも、話を聞くだけでも大丈夫です。
実家の今後について考え始めた段階で、お気軽にご相談ください。
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